6月講座レポート

2021年6月12日(土) 
川村英樹(かわむらひでき)先生
(鹿児島大学病院感染制御部副部長)  
テーマ「新型コロナウイルス感染症対策から社会を考える」

 

「収束が見えない中で、医療現場の人間が考えていることを話す」、パワーポイントを使いながら、新型コロナウイルスの特徴、SARSやMERS、新型インフルエンザとの比較、武漢での発生状況から話は始まった。寺田寅彦の言葉「物を怖がらなさ過ぎたり、怖がり過ぎたりするのは易しいが、正当に怖がるのはなかなか難しい」を引用しながら、対策の目的(基本的な考え方)や鹿児島県で必要な対応に言及。さらに、診断、検査(PCR検査の原理等)、国内及び鹿児島県の感染者数の推移、感染症の経過や合併症、感染経路等に話が進んだ。ICUの病室やスタッフステーションの実際、防護具の着脱の大変さ、飛沫感染・エアロゾル感染・接触感染、マスクと換気、鹿児島県のショーパブクラスターや与論クラスターにおける対応を紹介しながら「入れない・広げない・つぶされない」を強調された。

「新型コロナワクチンでわからないこと」として、①接種後の免疫持続性(試験では100~150日間) ②長期的な有害事象 ③無症状のウイルス保有者による感染伝播リスク ④変異株の影響。「アウトブレイク防止・対策のループ」を示して、社会全体で有事の対応が必要であるとされた。また「課題解決型の対応の必要性」に、①新型コロナウイルス感染症はまだ不明なことも多い「新興感染症」 ②新興感染症における課題はこれまでに抱えた問題点が顕在化したものが多い ③社会全体でコミュニケーションをとり、「アフターコロナ」を共通目標とした感染・経済対策が必要、これらを挙げて「社会全体での感染予防」「差別しない」(お互いを責めるのでなく共通目標を)が大切であるとされた。

  最後に、「ハチドリのひとしずく~今私にできること~」(森が燃えている中、クリキンディという名のハチドリだけは口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは火の上に落としていく。それを見て「そんなことをしていったい何になるんだ」と笑う動物たち。クリキンディは「私は、私にできることをしているだけ」と答えた。)を紹介された。