9月講座レポート

2021年9月11日(土) 
前田均(まえだひとし)先生
(学校法人前田学園理事長・鹿屋中央高等学校校長)  
テーマ「1÷3×3=1…?!抽象と具象・音楽と教育(学校で話していること)」

 

 ラフマニノフの交響曲をBGM(講演の時間の経過が分かるとのこと)に、自作の教材を使いながらユーモアとウイットに富んだ話が続いた。だまし絵等を提示しながら、先入観にとらわれることの危うさを説明、見もせずにあの学校はこんな学校だと先入観を作ることの怖さ、それを排除するには、子どもたちに「Feel」、抽象的概念を感じさせることが大切である。そして、思い込みから脱却するための「Think」、さらに、やろうと思わないと始まらない「Decide」、「FTDの法則」として、その必要性を力説、自分で感じ、考え、決めることは、成長につながる。必ずしも成功を約束しないが、絶対に成長を約束すると断言された。

「夢-現実=課題」、夢を描けなければ、現実との落差に気付かない、したがって課題も見えず、夢実現への手立てを組み立てることもできない。子どもたちが夢を描くには、心を震わせること、感動することが大切である。宇宙物理学者佐治晴夫氏の講演を紹介。小4の少女が「1÷3×3=1」、「0.99999…=1」がなぜ成り立つのか、その疑問を両親や教師に投げかける。疑問に答えられずはぐらかす大人たち、それがきっかけで拒食症に陥り登校できなくなった少女。45分の約束で少女の相談を受けた佐治先生。40分ぐらい、宇宙の果て、無限について話した後、少女が「先生、0.999がどこまでも続くと1と同じになるんだね」と意気込んで言ったとのこと。子どもの素朴な疑問にしっかり答える。そこに生まれる「分かった」という感動、その積み重ねが「夢」を育む。

陽明学者の安岡正篤の言葉「環境が人を作るということにとらわれてしまえば人間は単なるモノ、単なるキカイになってしまう。人が環境を作るからして、そこに人間の人間たる所以がある。自由がある、すなわち主体性、創造性がある。だから人物が偉大であればあるほど立派な環境をつくる。人間ができないと環境に支配される」を紹介。最後にバッハの「ゴルドベルク変奏曲」が流れた。心の洗濯をしてもらった気がした。