7月講座レポート

2022年7月16日(土) 
石塚孔信(いしづかよしのぶ)先生
(鹿児島大学法文学部教授)
テーマ「日本経済の現状と課題―平成30年間の制度・政策の変遷を中心に―」

 

 

    「今どんな問題が起きていて、それにどう対応すればいいのか、一緒に考える時間にしたい」と。パワーポイントを使いながら、GDPの定義、所得や支出及び景気との関係等、丁寧な説明。日本のGDPを学生に質問するとほとんど答えられない。いかに政治経済の授業が疎かにされてきたかの証。「大体500兆円で推移」、私は20年ぐらいこう言ってきた、要するに日本が成長していない、ここに問題点があるとのこと。景気はGDPの量で測る。消費・投資・政府支出を増やす政策をとれば、GDPが増えて景気がよくなる。2000年・12年・20年の「名目GDPの内訳」、個人消費が膨らんでいない、成長が見られない。「1980年~2019年の推移」、名目GDPは2000年代から横ばい、しかし物価水準で割り引いた実質GDPは右肩上がり、実質値は増えているからくり。

    マクロ経済、一国全体の経済を考える時、四つの部門「家計」「企業」「政府」「外国」を想定。総需要と供給が一致する水準でお金が回り、物やサービスが回る。この2、30年、日本は回るお金が非常に薄い。どうしたらいいか、消費性向を上げる、しかし所得が増えなければそうならない。もう一つは民間の投資を増やす、そのため金利を下げる金融政策、直接的には政府支出による財政政策、そして輸出を増やす。総需要を増やすことで供給を増やす。バブルの時は、この逆をやればよい。これが経済政策の仕組み。日本は適正にやったのか。80年代半ばの日本は貿易黒字、経済的に日本はアメリカの敵国。70年代から始まった日米貿易摩擦の激化、1989年には日米構造協議の開始、この流れでの規制緩和。バブル崩壊後に増加する特例国債(赤字国債)、どうにかするには税収を増やす、消費税が3%から10%へ。しかし所得税と法人税を下げているから、財政はよくならない。「戦前~戦後の債務残高の推移」、異常な国債、にっちもさっちもいかない。「地方交付税交付金の推移」、2000年代の落ち込み。振り返ると、インフレの時にデフレ政策をやった。その後、デフレに陥ったとき緊縮財政をやった。それを30年続けてこうなった。八方塞がりだと思うが、少しずつ財政を回復させながら、一方で経済も成長していく、それしかない。

    「日本の政治経済情勢」「米国・中国の政治経済状況」として、マトリックスを用いて、政党や主要人物等の立ち位置を説明。国際化とグローバル化は、似て非なる概念。現在、グローバル化は限界、むしろ地域をどうするか、国をどうするかをベースに考えるべき。