11月講座レポート

2023年11月25日(土) 
福留一郎(ふくどめいちろう)先生
(九州経済研究所執行役員経済調査部長)
テーマ「アフターコロナの鹿児島経済」

 

    柱は4本、①物価上昇はいつまで?②金利は上がる?③県内経済は?④中長期的な環境変化は?近年、異次元の物価上昇、少し落ち着いてはいるが依然として高止まり。物価上昇の一番の要因は円安、背景に日米の金利差拡大。戦後日本は円高が続いた。当時と決定的に違うのは、貿易収支とデジタル赤字。日本は慢性的な貿易赤字、円安が止まらない。デバイス関係、デジタルはほとんど海外から輸入。去年のデジタル赤字6兆円。円安によるインバウンド、しかし補うには足りない。

 石油危機、狂乱物価から50年、当時は賃金も上昇。今、金利差が解消されても円安の流れは止まらない。日銀の緩和政策があったとしても物価は上がる。インフレの時代へなっていくことを認識しなければならない。日銀の物価見通しも上がっている。2025年度が2.0%越えになるとマイナス金利解除。いよいよ「金利ある世界」へ。物価が上がれば金利も上がる、この流れは止まらない。2000年から20年の米国・英国・日本の家計金融資産伸び率、米国3.4倍、英国2.3倍、日本1.4倍。日本は現金預金が過半を占め、有価証券の割合が低い。資産運用も円安の要因、日本もNISA制度の拡大版、新NISA制度が来年1月から。国が金融資産を増やす仕組みを作る。

鹿児島経済、肉全体の相場が下落傾向。宿泊稼働指数(2019~2023)が4か月連続落ちている。観光客の絶対数は増えたが、人手不足で空室がかなりある。鹿児島県実質賃金指数(前年比)、2023年はマイナス圏に留まったまま。実質賃金を上げていかないと消費は回復しない。物価上昇と賃上げの好循環がないと消費は回復しない。インバウンド復活による回復率(1月~6月)、鹿児島県は最下位、一番の要因は定期便が復活しないこと。最大の課題は人口減少。昨年の出生数80万人割れ、少子化が10年早まった。人口減の加速、1億人割れ2053年予測が、2042年、さらに2036年に。鹿児島県も経営課題に「人手不足・求人難」、最低賃金を越える引き上げ企業が増加。しかし許容できる上昇額は、全国で2極化。熊本にTSMC工場、経済波及効果は7兆円弱(10年間)。第2工場、第3工場も。九州北部に半導体投資が集中。今後はDXを使った生産性の向上、新しい商品・ビジネスの拡大。鹿児島の強みは食と環境を中心にデジタル、脱炭素をからめること。今後は量を追い求めるのではなく、質・中身に目を向けることが大切なのではないか。