9月講座レポート

2022年9月10日(土) 
新川真吾(しんかわしんご)先生
(九州経済研究所経済調査部主席研究員)
テーマ「アフターコロナの鹿児島経済」

 

 

 

    スライドを中心に説明。最初に鹿児島県内外の経済状況をデータに基づいて紹介、後半でフターコロナの課題と展望。FRBのインフレ退治、アメリカでは消費者物価指数の上昇、それを抑えるため金利を上げる金融政策、日本とは違う景色。日米の金利が開くと円安は加速。オーストラリアもヨーロッパも利上げ、日本だけが世界と違う金融政策。エネルギーの国際価格の動き、原油・天然ガス・アルミニウム・銅、いずれも高騰。資材・電力価格も高騰。このような状況下での日本の中小企業の業況判断DI、2020年4~6月期にリーマンショック時を下回る水準まで急激に悪化。県内企業の業況判断DI、500社へのアンケート結果、リーマンショックから徐々に回復していく中でのコロナショック、底を打って回復しつつあるが、しっかり戻る状況にない。

    県内景況天気図(2022年8月)、7月と8月を比較、全て横ばい。企業物価指数、7月に企業物価8.6%上昇、統計開始以来の最高水準。経営課題は、原材料・仕入れ価格の上昇、人手不足。価格転嫁を実施している企業41%。消費者物価指数の上昇、値上げの秋、今からが本番、再値上げも、10~12月がピーク。下がる要因が見当たらない。世界の物価も上昇、しかし賃金も上がっている。鹿児島県は最低賃金32円引き上げ。しかし、企業が求人を下げる動きも。悪いスパイラルに陥る可能性。6月の県民の暮らし向きDI、マイナス16.8%は最低。今後マイナス26.4%の予測。

    アフターコロナの課題。「天文館の人出」は、朝と昼はコロナ前の9割くらい戻っているが夜は36%。鹿児島市街地の再開発、全国和牛能力共進会の開催、各種イベント再開(鹿児島マラソン、鹿児島国体等)、イベントが動き始めている。アフターコロナで観光を外せない。国内の宿泊者数はコロナ禍前の47%減、観光消費額45%減。入国制限の緩和等で、インバウンドも徐々に増えつつある。基幹産業の食、県内総生産に占める飲食料品製造業の割合は全国5位。食品製造業の付加価値率(2017年)は46位。食糧供給基地として原材料をそのまま出している。2017年の荒茶生産量は静岡に次いで32.4%で2位、仕上げ茶は4.2%の4位。付加価値をつけていない。一方、緑茶輸出は好調、抹茶の原料「てん茶」生産量は全国1位。お茶と焼酎のコラボ商品も。農業産出額(2019年)の66.0%を畜産が占める。かごしま和牛の経済効果は大きい。付加価値をどう付けるかが課題。会場から多くの質問・意見があり、閉塞感に風穴を開けたいと言う思いを感じた。