2021年3月20日(土)
藤枝繁(ふじえだしげる)先生
(鹿児島大学特任教授)
テーマ「海洋プラスチックごみ問題について考えよう」
大きな、よく通る声が教室に響く。ボックスから取り出される入れ歯やニッキ入れの小瓶・ガラス玉・ライター等々の漂着物。次々に代わる画面と歯切れのいい説明。すべてが具体的で実証的だった。研究者ではなくボランティアとしての活動から始まったとのこと。漂着物学会の事務局長でもある。
話の組立は「北太平洋で見つけたもの」「海ごみはどこから来るのか」「海ごみはどこへ行くのか」「今後どうなる?マイクロプラスチックについて考える」「これからどうする」。ミッドウェイのアホウドリからはイカの嘴のほかにライターやキャップも。北太平洋に広がる瀬戸内海起源ごみ、中に養殖カキに使われるプラスチックパイプも。中国大陸で大雨が降り、南から風が一週間吹けば大量のごみが吹上浜に漂着するとのこと。内陸から川を通じて海へ流れるごみ、陸上のゴミを河川が集めて海へ運ぶ。3.11の津波の漂着物は、風の影響を受けてアラスカへ。風の影響を受けない漂流物は太平洋の真ん中に集まる。「ライタープロジェクト(鹿児島県海岸に漂着したライターの流出地)」「指標漂着物を用いたごみモニタリング」「伊勢湾における海洋ごみの起因地と漂着地の関係」「街中散乱ごみマップ(大阪市役所周辺)」等々、具体的な数値を並べた資料、その説明に説得力があった。
「ワースト10品目の29年間の推移(ICC2018 in Japanより)」では、90年代と比較して、たばこのフィルター1位が5位に、プルタブは2位からほとんど無いへ。逆に増えたのは、フィルム系プラスチックが10位から2位へ、ペットボトルが4位に、硬質プラスチック破片は1位に。いずれも社会情勢による変移である。「瀬戸内海における海洋ごみの収支」を示しながら、「個人の努力による陸からの流入量による削減が必要。すべての人がごみを適切に捨てる行為を。理解しても行動しなければ。」と結ばれた。