12月講座レポート

2021年12月11日(土) 
門田夫佐子(かどたふさこ)先生
(南日本新聞社霧島総局長)
テーマ「地域の現場から」

 

    山への関心は、かなり前から。大口支局時代の2006年には、「伊佐森林組合が山主に間伐プランを示す」を記事に。2008年に上下連載「森林組合は今」、造林補助事業の杜撰さを指摘。本社編集委員時代には、2014年に「荒れる山林」の記事。木材価格低迷、世代交代の中、間伐をしない放置林が各地に。土壌流出、倒木の恐れ、自然災害を引き起こしかねない。県の森林面積60万haのうち6割が民有林、そのうち2割が不在村山主、一人当たりの山の保有面積は全国平均の半分くらい、山主の関心が薄れる一因に。山は私有財産であると同時に自然災害を防ぐ公的なものでもある。

    昨年11月から、霧島・鹿屋・曽於・都城の4総支局担当の7回連載記事「ひずみゆく山々」を。きっかけは、先祖代々受け継いだ山を伐採業者によって誤伐=盗伐された訴え。山主と山林仲介人・伐採業者の間で、無断伐採の責任の所在があいまい。鹿児島県の山は所有規模の小さい森林が隣り合っているため、一つの山を切ったとき、運び出すために隣の山にも手を入れる例が。個人で警察に訴えても、解決が難しい。宮崎では、被害者の会を組織して奏功。

    一方、山を取り巻く状況も変化。ウッドショック、世界的な木材高騰、あっという間に伐採される木々。再造林に取り組んでいる霧島造林を、今年の5月から年間を通した随時連載「山にはたらく霧島造林の四季」として紹介。植林請負6年目、若手4人で起業、朝日とともに山仕事、スキルは年々向上。新たな収入源として「枝もの」生産も導入、自前の映像部門を作り、映像制作もスタート。小学校で出前授業も。授業の終わりのきめ言葉は「山で働きたいと思ったら、10年後に山で会いましょう」。認知度を上げて子どもが憧れる職業にしたいとのこと。霧島造林の事務所のホワイトボードには「・鹿児島の再造林率を上げるためには? ・森林への関心を高める:教育から ・木一本から取れる金額を増やす(川上から川下まで把握する必要がある)」等の文字。環境を守りつつ、目指すは小さな林業。

    今年度中には最終回を迎えるが、現在、動画を配信中。好きな言葉「切株があり愚直の斧があり(佐藤鬼房)」を紹介し、今後も愚直に取材をしていきたいと結ばれた。