2022年6月11日(土)
陶山賢治(すやまけんじ)先生
(MBC開発代表取締役社長)
テーマ「ニッポンの憂鬱~コロナ禍から見えてきたもの」
先生には、「造士館講座」の運営委員として、日ごろから貴重なご助言をいただいている。「悲惨指数=失業率+インフレ率」の数値を示しながら「梅雨に入ってうっとうしい季節、我々の暮らしもうっとうしい時期に入っていく」、アクリル板越しに淡々と静かに語られる。2年半もマスクをし続けるなどと誰が思っただろうか。コロナは、色々なフィールドで、目に見える形、見えない形で、私たちの暮らし、私たちの肉体やマインドにボディーブローのような影響を与えている。ご自身の企業経営の状況や母上を看取れなかったこと等、最愛の家族と会えないことがどれほど不条理かを身に染みて感じたと語られる。
2年半の経験を振り返ると、当たり前のことが裏切られたり、想定外の展開を見せたりすることが結構あった。資料「新型コロナ感染症感染者数の推移」を示し、ウイルスの性質やスペイン風邪にも触れながら「ウイルスとの共生」に言及。次いで「日本の新型コロナ感染症の推移のおさらい」、2020年1月6日、厚労省の注意喚起以降に生起した様々な事象、風評、政府の対応等の大騒ぎ、今になって思えば政府も医療界も私たちも、不意打ちを食らったドタバタ。コロナ以前から続いていた、この国のおかしさが露呈されたと。「政府対応の乱れはなぜ」、①新興感染症への準備は無きに等しかった ②ワクチン開発の遅れ ③PCR検査の少なさ ④デジタル後進国 ⑤学会の停滞 ⑥縦割り行政 ⑦輸入先の偏重等、明快に説明された。日本の今の国の形を見ると、新型コロナ以降も形としての大転換を起こそうとしていない、根拠のない楽観の中で「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という流れ。
「健康と経済の複合危機の行く末」として、○グローバリズムの宿命(新興感染症に脆弱な世界構造) ○格差の影(最低限の防御さえできない人たちを放置) ○ナショナリズムへの回帰(排外主義) ○社会分断(SNSによる覆面攻撃、同調圧力、自己責任論の台頭)を挙げられた。コロナが私たちに問いかけたものは結構ある。私たち自身が2年半の間にどこかで慣れて、変になっているのでは?昔の私と今の私、何か変わってきていないかを一人一人自覚することが必要。コロナを通して、これからの鹿児島、私たちの暮らし、生き方が見えてくるのでは、そんな思いで話をさせていただいたと結ばれた。