7月講座レポート

2021年7月17日(土) 
竹原静史(たけはらしずと)先生
(鹿児島県大崎町役場企画調整課主幹)  
テーマ「地域と共創するふるさと納税」

 

  人口約13,000人、主産業は農・畜・水産業。「大崎町は何もない町」という言葉から始まったが、「大崎町の主な日本一」に「うなぎの生産量」「鶏の生産量」「パッションフルーツの生産量」等々を挙げ、さらに「ふるさと納税(町村の部)」「ごみのリサイクル率(83.2%)」に入ると、俄然、話が熱を帯びてきた。

  平成27年「ふるさと納税担当」となり、この年に市を除く町村で日本一となる寄付額27億円を記録。厳しい財政状況下、消滅自治体の可能性すらあった町、今や貯金が借金を上回り、自主財源を確保している町。「ふるさと納税」を機にマーケティングの重要性を認識、職員のモチベーションも上がり、自分たちの町は自分たちで守る意識が醸成。未来を創る企業、まちづくりをする最高の非営利団体、潜在力と課題しかなかった小さな町の挑戦、課題解決のためのテーマパーク、元気のいい言葉が飛び出す。「ふるさと納税は、地域に落としてこそ、初めて機能するもの!」、統合した大崎中学校に備品として400万円を予算化、新しい楽器を手にした子どもたちが、顧問の熱意溢れる指導の下、夏のコンクールで金賞、県代表として南九州大会に出場、そして恩返しの定期演奏会、流れるビデオ映像は圧巻だった。

  住民×企業×行政の協働によるリサイクルを起点としたまちづくり、焼却炉に頼らない低コストの「大崎システム」、20年以上続く取組は一つの文化として定着し「持続可能なまち」として評価されている。ゴミのリサイクル率13年日本一、第2回ジャパン SDGsアワード内閣官房長官賞受賞、令和元年度SDGs未来都市及びSDGsモデル事業に選定。慶應義塾大学SFC・鹿児島相互信用金庫との連携による地域課題解決等にも取り組み、その結果、起こっていることとして、①若者が帰ってきやすい町へ(リサイクル未来創生奨学ローン創設)、②大崎町の取組を世界標準にするために(リサイクル留学生プロジェクト推進)、③子どもから高齢者、外国人等多様な人々が集う場へ(SDGs推進の拠点施設の整備)、④補助金に頼らない自立した町へ(企業版ふるさと納税やESG投資の活用)。人づくり、まちづくりの哲学に支えられた実践の重みに圧倒された。