2024年11月23日(土)
上谷順三郎 先生(鹿児島大学教育学部教授)
テーマ「小・中・高の文学教材について」
レジュメに、「語り手」に注目した『文学を読む授業』のコミュニケーション」と書いたが、文学は「語る」のが基本。どんなことをどう語っているかが、一番面白い。作家を知らなくても作品を楽しめるのは、その文章の語り方が面白いから。そのあたりに注目して、小・中・高の有名な文学教材を取り上げて、一緒に考えていきたい。資料に「小学校・中学校・高等学校の代表的な文学教材」の一覧表。一番古い教材は椋鳩十の『大造じいさんとガン』、1951年から小5で。中・高にも70年以上使われている教材が。長期間取り上げられているということは、教材としての価値があり、どんなことが学ばれていたのかが、日本の今の小・中・高から70~80代の皆さんまで共有されているということ。文学の授業での学びを、日常の生活、読書の機会にどのように生かしていけるか考えてみたい。
作者と語り手は違う。語り手は作者の代行的立場、灯りを照らしながら読者を導く役割、しかし読者の選択肢のなかで違った世界が開ける。「語り手の視点」として四つ、①「三人称客観」、②「三人称全知」、③「三人称限定」、④「一人称」。一人称は、語り手が登場人物として作品の中に出てくる。三人称は、語り手が作品の外から語る。私たちは、語り手が設定した世界を読んでいる。①は登場人物の気持ちが書かれていない。動作を通して読み取る。②は語り手が全ての登場人物の気持ちが分かるように地の文に書いている。読者も同じ気分を共有。③は特定の登場人物に寄り添った目線、長編では章ごとに異なる人物の視点で。④は主人公が語る。ドキュメンタリーのように回想が入る。小2・3ぐらいで三人称客観から三人称限定へ。ある特定の人物から世界を見たり考えたりする。小6『やまなし』が一人称、中学校の『少年の日の思い出』『故郷』は一人称、高校では『こころ』が一人称、作品が複雑になる。私たちは、こういう語り方を順番に読んできている。
タイトル、語り手の視点、設定、表現の観点で捉えると作品の特徴が現れる。その一覧表を示して具体的に説明。2023年4月~2024年3月、連載執筆の「国語教師のための『テクスト論』超入門」(『教育科学国語教育』明治図書)から、『走れメロス』や『故郷』を紹介、複数の物語でできているのが小説。高校入試や大学入試には、一つの問いの中に複数の文章が入っており、それを読み比べながら考える問題、資料として新聞や様々な情報の広告を併せて読んで答える問題等があり、読解力が求められている。最後に谷川俊太郎の教科書教材(小学校から高校)を紹介。