3月講座レポート

2023年3月18日(土) 
山元正博(やまもとまさひろ)先生
(源麹研究所代表取締役・農学博士)
テーマ「麹の機能性について」

 

    USBの不具合により、時間のほとんどをホワイトボードで説明、手書きの文字に強い説得力があった。酒造りは米を麹で糖に変え、その糖を酵母がアルコールに。暑い鹿児島では酢になる。蒸留して焼酎にしてしまう歴史があったのでは。戦前まで、国の税収の50%は酒税。明治期、祖父の河内源一郎は国税庁の酒類鑑定官として南九州に赴任。課題は温度が高くても安全に焼酎を作る方法。沖縄の泡盛の黒麹に着目。黒麹は腐敗防止効果のあるクエン酸を出す。当時使われていたのは「友種」。東京大学と国税庁で純粋分離合戦、結果「kawachi」の名前を付けた黒麹発見。その黒麹からアレルギーが起きない突然変異の白麹を発見。

  「麹は日本の産んだ奇跡」、学名のアスペルギルス(Aspergillus)は、海外では病源菌。日本の麹は遺伝学的に100%安全。昔の日本人は、緻密な手作業による麹づくりを通して悪い遺伝子を淘汰、木灰を使って純粋分離と同じことをした。経験を通して技術を確立した。今、無くなっているのは「感性」、考え抜いて、鍛えぬいて、追い込んでいくと、「感性」で感じるものがある。日本人は今一度、それを見直さなければならない。27歳で種麹づくりを始めた時、父から「知識は捨てろ」と言われ、ひたすら「感性」を磨いた。具体的な体験を披瀝しながら、極限まで追い込むことの大切さを強調。そこには、理屈抜きに神様が教えてくれる世界が。研究者は、そこまでやらなければだめ、今の日本には、「磨きぬく教育」が欠けていると。

    焼酎廃液を発酵熱で乾燥させる技術を確立。水1トンを加熱乾燥させるのに重油代1万円、発酵乾燥では電気代1500円。食品残渣の発酵乾燥にも応用可能。1トンの焼酎廃液から50㎏の乾燥物。麹の機能性の1番目は、クエン酸を出す(発酵熱の活用)。2番目は乾燥物の力。「食品残渣液体飼料化(麹リキッドフード)」は豚の腸内環境を大幅に改善し良好な肉質を。さらに搾乳牛の頭数の増加と除籍率の減少にも。極めて良質な豚糞堆肥は作物を大きく甘くする。麹発酵乾燥技術の応用可能分野に、廃棄卵、死魚、EFB(パームオイルの搾りかす)の飼料化が。し尿液肥化技術は、「農水省みどりの食料システム戦略技術81選」に採用。腸内環境を改善するのは酪酸、「河内菌」の甘酒で酪酸が増える。酪酸は免疫細胞の栄養。甘酒による腸内環境改善効果のグラフ提示。花粉症への効果、生活習慣病を治す、「茶麹」に一番の効果が。一つ一つが腑に落ちた。いいことづくめの結論。しかし、そこには実証的な裏付けがあった。