2023年1月9日(土)
山田誠(やまだまこと)先生
(鹿児島大学名誉教授、元法文学部長)
テーマ「“イマ”どきの若者、“イマ”どきの男たち―『現場力』の身のつけ方を問う―」
終始、熱い語りに圧倒された。成人の日の今日、若者の話をするのはいいこと。日本では「成人とは何か」の中身を議論しない。「若者とは、大人でも子供でもない、不安定なポジションにいる人々」、産業界に入る前の大学生が、今どういう状況にあり、何を考え、何をしたいのか、彼らの本音を取り出す機会がほとんどない。街中にあふれる若者論の多くは「マニュアルはできるがそれを除いたら何があるのか」といった年配者からの辛口の見方。比較的確かなことは安定性志向の強さ。就職セミナーに大勢の若者が集まる。
受け身の授業、能動的に勉強しようとする意欲が弱くなった、社会に出て使い物にならない。2010年頃から、全国の大学が教育改革に着手。専門知識の詰込み授業から能動的な参加型授業(アクティブラーニング)へ。しかし、授業の在り方は変わってきたが、自主的に勉強する時間は増加せず、新しい分野に挑戦する態度変化も現れない。若者をしっかり見ていなかったのでは。勝手に切り取った、自分の思う若者像があって、それにあてはめていたのでは。若者はもっと違う場面で、違うスタイルで、不安定な立場を越えていく、外に向かって広がっていく、そういう行動をやっているのでは。大人が生身の学生の実態をとらえていないのではないか、これが私の考え。
2016年熊本地震、大人たちの現地対応の無秩序ぶりと対照的な学生たちの避難所運営。熊本学園の学生たちの運営モットー「管理はしないが配慮する」が高い評価。熊本大学の学生たちは、体育館の中央部に学生主体の運営本部を設置、皆が見ている所で一緒にやろうとの意識。宮崎県山村の西米良村で10年以上開かれている大学生プロジェクト「九州まちづくり」祭の紹介。毎年1回の秋のイベントへの準備と運営を通して、学生が自分たちで自己形成の場を創出、そこには失敗を許容する地元の大人たちの存在。頼りなく不安定な若者たちを認めて付き合ってくれる大人たち、学生たちは失敗しながら気づいていく。順位付けしないで、歓迎してくれる場は、大学の外世界にしかない。西米良村でお世話になった大人たちこそ、本当の意味で若者を社会に出ていく大人にしているのではないか。
今の若者たちは余裕のない社会で子どもから大人になったのでは。失敗するチャンスを与えられていないのでは。私たちはもっと彼らに失敗するチャンスを提供しないといけない。彼らがそういう機会が持てるように、お金やそのような場をたくさん提供できる大人でありたい。