1月講座レポート

2021年1月11日(月) 
安川あかね 先生
(西郷隆盛研究家)  
テーマ「西郷隆盛その生涯と3つの覚悟

 

 横須賀市に生まれ、西郷隆盛に傾倒後、27歳で鹿児島に移住。本講座では、西郷隆盛の生涯とその歴史的背景を丹念にたどりながら、「覚悟」(さとること)に焦点を当てて、その人間像を分かりやすく話していただいた。途中からは熱い思いが入り、講談を聞いているような心地よさを覚えた。「時代を超えて尊敬されたのは、覚悟を決められる人間だったから」、それを育てたのは、薩摩の郷中教育であり、島津斉彬をはじめとする様々な人材との出会いや遠島による虜囚生活。「いかに生きるべきか」と「いかに死すべきか」を重ねた覚悟、その底に「人間として情の厚さ」がある。それが、①竜ヶ水沖での僧月性との入水、②江戸城無血開城における「おいどんがすべて引き受けもんそう」の一言、さらに③私学校徒暴発による情にほだされての最後の決断に現れる。

西郷の「高潔な覚悟」は村田新八、篠原国幹、別府晋介、桐野利秋らの「ぼっけもん」(私利私欲を離れた純粋な勇敢さ、ハヤひとと呼ばれた隼人精神)を引き付けた。南洲墓地には勝海舟の歌碑「ぬれぎぬを干そうともせず子供らがなすがままに果てし君かな」。『南洲翁遺訓』は、日本版『論語』でもある。西郷の薫陶を受けた旧庄内藩関係者が西郷の名誉回復後1890年に生前の教えや言葉を集めてまとめたもの。

 西郷隆盛を「もっとも日本人的で、もっとも高い水準と成熟度を持った、日本人の民度の象徴」として、最後に徳富蘇峰の次の言葉を紹介された。「私は南洲翁を慕うという国民の心が実に有難い。こういう心がある間は、日本はまだまだ大丈夫である。これが無くなる時には、恐らくは国が亡びる時と思います。」(南洲先生没50年記念講演にて)